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長崎地方裁判所佐世保支部 昭和30年(ワ)352号 判決 1957年4月26日

原告

右代表者法務大臣

中村梅吉

福岡市浜町福岡法務局内

右指定代理人訟務部長検事

小林定人

福岡市浜町福岡法務局内

右指定代理人法務事務官

堤武四郎

長崎市本博多町十三番地長崎地方法務局内

右指定代理人法務事務官

柴尾力

福岡市大名町福岡国税局内

右指定代理人大蔵事務官

江藤実

佐世保市木場田町佐世保税務署内

右指定代理人大蔵事務官

岩城忠夫

佐世保市本島町七十番地

被告

株式会社 大丸呉服店

右代表者代表取締役

高木秀五郎

右訴訟代理人弁護士

溝口蓮峯

右当事者間の昭和三十年(ワ)第三百五十二号債権者代位による貸金請求事件につき、当裁判所は次のように判決する。

主文

被告は原告に対し金四百三十万六千五百五円の支払をせよ。

訴訟費用は全部被告の負担とする。

事実

原告国の指定代理人は、主文同旨の判決を求め、その請求の原因として、原告国は既に昭和二十九年六月七日当時より佐世保市本島町七十番地訴外有限会社高木商事に対し昭和二十八年度分未納法人税金五百三十九万九千百十円及び昭和二十九年度分法人税金三十六万四千八百円の租税債権を有している。而して右訴外会社はその当時において被告会社に対し金四百三十万六千五百五円の貸金債権を有していたので佐世保税務署収税官吏は昭和二十九年六月七日前記滞納法人税のため国税徴収法第十条、第二十三条の一第一項に基き右訴外会社の被告会社に対する前記債権の差押をなし、同日被告会社に対しその旨の通知をなした。然るに被告会社は右差押後の同年八月三十一日前記訴外会社に対し金八万七千六百円を支払つているが右弁済は原告国に対しては効力を有しない。仍て原告国は右訴外会社に代位して被告会社に対し前記債務の弁済を求める旨を述べ、立証として、甲第一乃至第六号証、第七号証の一、二を提出し、証人福田光治及び同六丸正之の証言を授用した。

被告会社訴訟代理人は、原告の請求を棄却する、との判決を求め、答弁として、原告主張事実中原告国が訴外有限会社高木商事に対し滞納にかかる昭和二十八年度分及び昭和二十九年度分法人税の租税債権を有しているとの主張事実は不知、右訴外会社が被告会社に対し貸金債権を有しているとの主張事実は否認する。原告国が右訴外会社に対し債権の差押をなし被告会社にその旨の通知のあつた事実は認める旨述べ、立証として、証人峯芳隆、同永原二郎及び同高木進の各証言を授用し、甲第一乃至第三号証、第五号証及び第六号証の各成立を認め、爾余の甲号各証の成立は不知と答えた。

理由

成立に争のない甲第一号証及び同第五号証に証人福田光治、同六丸正之の各証言を綜合すると訴外有限会社高木商事は昭和二十九年七月六日現在において昭和二十八年度法人税金五百三十九万九千百十円及び昭和二十九年度法人税金三十六万四千八百円を滞納し、従つて原告国は同日現在において右訴外会社に対し右各金額の租税債権を有している事実を認めることができる。成立に争のない甲第六号証、証人福田光治及び同峯芳隆の各証言に依り、成立を是認し得る甲第四号証、証人福田光治の証言により成立を是認し得る甲第七号証の一、二に同証人、証人永原二郎及び同高木進の各証言(但し、証人永原二郎及び同高木進の各証言中後記措信しない部分を除く)を綜合すれば、右訴外会社は昭和二十九年七月六日現在において被告会社に対し金四百三十万六千五百五円の貸金債権を有していた事実を認めるに足り、証人永原二郎及び同高木進の各証言中右認定に反する部分は措信し難く他に右認定を覆するに足る証拠は無い。而して同日佐世保税務署収税官吏において前記訴外会社に対する法人税の滞納処分として右訴外会社の被告会社に対する前記貸金債権に対し債権の差押をなし、その旨同収税官吏により被告会社に通知のなされた事実は当事者間に争がなく、前記甲第七号証の二に依れば昭和二十九年八月三十一日被告会社より右訴外会社に対し右債務の弁済として金八万七千六百円の支払をなしている事実を肯認し得るところであるが、右弁済は前記差押後に行われたものであつて、右弁済は原告国に対しては効力を有しないものというの外はない。以上認定の事実によれば原告国は前記差押にかかる債権につき訴外会社に代位して権利を行使し得るので被告会社は原告国に対し金四百三十万六千五百五円の支払をなすべき義務あることが明らかであるから、原告国の本訴請求は理由があるので全部認容すべく、訴訟費用は民事訴訟法第八十九条に則り全部被告会社の負担すべきものとする。

仍つて主文のように判決する。

(裁判長裁判官 彌富春吉 裁判官 真庭春夫 裁判官 重富純和)

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